【出荷調整】咳止めが不足? 表に出ない原因を解説【医療崩壊】

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本業に関する事がヤフーニュースのトップに出ていたので珍しく薬のことを書きます。

最近咳止めや抗生物質が不足しているというニュースを聞いたことがありませんか?

風邪で病院に行った人は薬がなくて薬局をたらいまわしにされたケースがあるかもしれません。

「病気で病院に行ったのに薬貰えなんてありえない」「先進国の日本で薬が手に入らないなんてことあり得るの?」と思う方も多いでしょう。

私も10年以上薬剤師をやっていて近年の状況は異常です。

なので今回は薬が共有不足になっている理由と少しでも薬を貰える可能性が高くなる方法をご紹介します。

年末年始はさらに風邪がはやりそうですし、インフルエンザのピークもまだです。

薬難民にならないように参考にしてください。

 

1.薬不足の現状

まず世間ではどの程度薬が不足しているのでしょうか?

あまり病院に行かない人にはわからないかもしれません。

2023年9月に行われた調査では90%の医療機関が「入手困難な医薬品がある」と回答しています。

診療科別にみると耳鼻咽喉科小児科が多いです。

また全医療用医薬品のうち約30%が通常通り出荷できない状況にあると言われています。

ニュースになっている咳止めや抗生物質だけでなく、血圧の薬や局所麻酔薬など常に飲まないといけないお薬や手術に不可欠なお薬も不足しています。

そして問題となっている医薬品の供給不足はさかのぼってみると2年ほど前から始まっているんです。

 

2.医薬品不足の原因

なぜ咳止めをはじめとした医薬品の供給不足が起こっているのでしょうか?

表面的な問題と日本の医療体制の底にある問題について解説します。

 

①ジェネリックメーカーの不祥事

2年ほど前から医薬品の供給不足が起こっている事は前述しましたが、その発端となったのがジェネリック医薬品メーカーの不祥事です。

2020年12月に福井県にあるジェネリック医薬品メーカー【小林化工】が製造した水虫の薬に睡眠薬の成分が混入していました。

この薬を飲んでしまった200人以上の患者に健康被害が発生し、2名が亡くなるという悲惨な事件です。

当時30店舗以上を管轄するエリアマネージャーだった私も、一報を聞いてすぐに地区内の調査に乗り出しました。

幸い小林化工が製造したイトラコナゾールを在庫している店舗は1つで、対象のロットではなく健康被害はありませんでした。

この事件をきっかけに後発品メーカー全体に対しての風当たりが厳しくなりました。

そして【日医工】など他のジェネリック医薬品メーカーでも製造過程の不備が見つかり行政処分を受けました。

行政処分によりジェネリック医薬品メーカーの生産量は低下後発医薬品使用率は全国平均80%弱ですので生産量が低下した影響をモロに受けます。

『後発品が足りない』→『先発品にもしわ寄せがくる』→『医薬品全体の欠品』となりました。

結果、2021年以降の医薬品の供給不足問題の引き金になったのです。

 

②コロナによる医薬品需要

2020年から猛威を振るったのが新型コロナウイルスです。

流行初期では有効な治療法がなく、風邪薬で対処していました。

そんな中起こったジェネリック医薬品メーカーの不祥事。

風邪に使用する医薬品の供給不足がはじまりました。

そして新型コロナが落ち着いた現在ではインフルエンザやアデノウイルス、コロナ後遺症の咳などで咳止め薬の需要過多になっている状況です。

メーカーも改善はしているでしょうが、需要が多すぎて対応しきれていません。

 

③製薬会社の利益にならない

咳止めの供給が不安定な原因として、作ってもたいした利益にならないというものが挙げられます。

ご存知の方も多いとは思いますが、お薬の値段は国が決めています

「咳止めが不足してるから値段をあげてやろう!」みたいな感じで製薬会社や薬局が値段を決める事は出来ないんです。

今不足している咳止めの代表「メジコン」は1錠5.7円です。

100錠入り1箱売っても570円の世界。

薄利多売、むしろ売れば売るほど赤字になるかもしれません

そんな中で政府は11月に増産要請をしましたが、製薬企業としては利益の出せる薬の量を減らしてまで利益の出ない薬を作りたくはありません。

薬価改定での対策もあるようですが、医療費がまた上がるので根本的な解決にはならないでしょう。

さらには風邪薬自費案なども出ているようです。

様々な案が出ていますが現状全く解決策にはなっていません。

 

3.不足している薬を手に入れる方法

『処方せんはもらったけど薬局に薬がなくてたらいまわし』『かかりつけの薬局があるけど薬あるの?』不安に感じている方が多いかと思います。

どうすれば薬が手に入るのでしょうか?

そこで少しでも薬を貰うことができる確率が高くなる方法をお伝えします。

①病院でどこの薬局に薬があるか聞く

処方せんを出す病院も薬が不足している事は知っています。

なので病院で処方せんを貰う時に、どの薬局に行けば薬があるか聞いてみましょう。

連携している薬局の在庫は把握している病院もありますし、近隣の薬局に電話で確認してくれる病院もあります。

②病院の近くの薬局に行く

そもそも出荷調整というものは医薬品卸が少ない供給を必要な医療機関に分配している状況です。

咳止め薬を例に挙げると、咳止めを普段使わない眼科の門前薬局よりも普段から咳止め薬を使う呼吸器内科の門前薬局の方が薬が手に入りやすいんです。

これは小児の粉薬や水薬でも当てはまります。

普段小児科の薬をあまり出していない薬局には小児の水薬や粉薬は入荷しにくいんです。

なので風邪薬や抗生物質の処方せんを貰った場合、門前薬局もしくは同じような診療科の近くの薬局の方が薬は手に入りやすいんです。

 

③処方せんを貰ったらすぐに薬局に出す

最近夜遅くまで営業している薬局も増えています。

「混んでるから後で遅くまでやってる薬局で薬を貰えばいいか」と思う方も多いでしょう。

しかしそうすると入荷しにくい薬の場合はすぐに薬がもらえない可能性があります

同系統の薬なら調剤できる場合もありますが、医療機関に変更してもらわないといけません。

その場合医療機関が閉まっていたら、翌診療日以降の対応になってしまいます。

また医薬品卸の営業時間は17時から18時で終わってしまいます。

18時以降は薬局で薬がいつ入荷するか確認が取れません。

なのでなるべく早く薬局に処方せんを出すことで、『卸に入荷確認ができる』『病院に薬を変えてもらえる』という点から早く薬を貰うことができる可能性が上がります。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

珍しく本業の薬剤師らしい記事を書いてみました。

薬剤師の視点で少しでも薬がもらえる確率が上がる方法も書いてみたので参考にしてみて下さい。

今回の医薬品供給不足問題は医療崩壊の始まりになりうる問題だと思います。

今の医療制度だといろんなところにひずみが出てしまい、今後も患者が適切な医療を受けることができないケースが発生するかもしれません。

普段からお薬を飲んでいる人はこのような医療のニュースに敏感になっておいた方がいいです。

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